2008 SUMMER いまどきの石垣島

何かしらここへきて風向きが変わり、地方紙にも以前だったらアンビリバボーな記事が目立つようになりました。
そこで沖縄返還から36年を迎えて、上へ上へと登って来た階段の踊場に立つ”石垣島の今”を移住環境中心に語ってみたいと思います。

■石垣島の沈静化とは何か

2年前の石垣島ミニバブルと叫ばれた頃に対して、今の、このちょっと覚めた状況を称して”沈静化”と呼んでいるらしい。
地方紙などでも八重山の移住熱が沈静化したという表現がなされており、ミニバブルの崩壊というような言葉は使われていないようだ。
”沈静化”。この言葉の裏にあるものは、つきものが落ちたかのように異常な熱病から覚めたという感覚ではないだろうか。
メディアに踊らされ、夢だけ膨れ上がってはみたものの、現実に触れ、冷静になってよく考えてみれば、同じ国にそんな楽園があるわけないじゃ〜ないかという、ふと当たり前の真実に気づいた状態ではないかと思う。
地域に馴染まないナイチャーが続々やってきたり、具体的な需要規模もリサーチせぬまま、むやみやたらとアパートが建ち、急激に変化していった昨年までの石垣島の状況こそが異常なのであって、ある意味、現在は異常事態が収拾し正常に戻りつつあるとの認識がそこには感じられるのである。
それぞれの立場によって、この沈静化に対する、よしあしの評価は分かれようが、少なくとも石垣島移住ブームがひと段落し、熱が冷めて島はある種の落ち着きを取り戻して来たとは言えそうである。


■石垣島の不動産状況

もともと業界に携わる人なので、触れないわけにゆかないのが石垣島の不動産事情である。
2年前までは石垣島はミニバブル現象と言われるほど、全国的にも注目度が高まり、土地需要が急増、海の見える高台の土地が高値で売り買いされ、こんな値段で売れるばあ?という心配をよそに、原野にはシャレた家が次々建てられていたものであった。
しかし建てた家が混み合うにつれ、都会ではけして得られない景観や自然環境という絶対的アドバンテージ感は薄れて行き、不便なところに妙な集落が出来たという感慨を移住者と地元民の間で共有しつつあるのではないだろうか。
こんな状況を察してからか、羨まれるうちに高値で売ってしまおうという不動産物件も中にはあるように見受けられる。
また、ふくれあがる移住者で、一時は地元住民すら結婚して家を出ようにも行き場がなかった賃貸住宅不足に関しても昨今の異変は著しい。
いくら建ててもすぐ埋まる、とばかりに災害時の仮設住宅と見まがうほどの急ピッチでアパートマンション建設が進められた結果、周辺の景観や物流にまで多大な影響を及ぼしたが、独自の需要予測や経営判断に基づかずに飛びつく地域的特長も手伝って、あっという間に空港周辺は島外業者進出による同じようなアパートマンションで埋め尽くされ、一機に需要と供給の関係は逆転した。
いまや、石垣島では空き室情報が氾濫し、まずはいろいろな物件を見てから条件を検討して決めるという、以前では考えられなかった買い手市場の状況が進んでいる。
敷金、礼金ゼロから1ヶ月家賃無料・・・さらに月家賃が下がるのも時間の問題だとみられている。
そういった面では東京と変らず法外に高い!とまで言われた石垣島の家賃だから、経済的な問題から来るに来れなかった移住者にとっては、好ましい住環境が整いつつあるとも言えるだろう。
その一方では、まだまだ島の給料に見合う、家族で暮らせる安い物件は需要の割に少ないから、価格値下げにもう一押しを期待する地域住民からの声が強いのも事実である。



■団塊世代はどこへ行ったのか?

さて、昨年騒いだ石垣島の2007年問題はどうだったのだろうか。
振り返ってみれば年初の問い合わせこそ一時的に増大したものの、それ以降、具体的に移住にまで発展し、成功している団塊世代の例は周囲を見る限りにおいて少ないように思われる。
この原因は、いろいろと考えられるが、ひとつは島のキャパシティも考えずにメディアが幻想を煽ったこと。
地域も異質な文化をもつ熟年移住者に警戒心を示し、不用意な移住や土地購入に対し行政が警告を出したり、景観への規制と称して建築困難な状況をつくりだすなど、逆風が吹き荒れたこと。
また団塊そのものの動態として言えば、そもそも積極的に移住するアグレッシブな団塊は、定年前に既に移住に動き出しており、逆に定年まで会社に残る団塊世代は60歳とともにきっかり定年退職などしなかった事も当初予想ほど、動きがなかった原因ではないかと考えられる。
また、本当に定年過ぎて初めてやって来たら、八重山には理解に苦しむことも多く、住んでも馴染める土地ではないと出戻りを多く発生させたことも、団塊世代の石垣島移住が大きなトレンドにはならなかった一要因と考えてよいだろう。
そして、折り合いの悪い先住移住者と団塊移住者の関係などナイチャー同士の不協和音の存在も様々な事例を通して垣間見えた2007年ではなかっただろうか。



■若年移住者はどうしたのか?

2007年、移住に関して氷山の見えない部分が問題になる年と書いた。はたしてスポンサーに左右されない移住者自身の手によって書かれたブログなど、草の根メディアを通して現実の姿が次第に明るみに出たことの影響は無視できない。これにより”南の楽園”といった明らかに島に対する逆偏見とも言える勘違いは減ったのだろう。
たいした仕事をしなくても暮らせ、隣人たちが家庭菜園の野菜や海で釣った魚を持って現れては夜な夜な仲良し宴会が続く・・・そんな移住番組を繰り返し見せられてその気になった人たちに、これらは激しい情報の逆風として吹付けたのではないだろうか。
安易な情報に感化されやすい人々は概してネガティブな情報にも簡単に影響を受けやすい一面を持つのは道理である。
そこにも急速に増大した移住需要が沈静化という言葉とともに急速にしぼむ必然的要素はあったのではないかと考えられる。
島にやってきてまで、目の前にある現実を無視し、聞きかじった情報の良いところだけを利用しようとした人々は、ギャップに苦しみ、地元社会に馴染めずに結果として帰って行ったということが言えるだろう。
今のところ、はっきり移住人口がマイナスに転じたという数値的裏づけはないが、移住者による増分が激減していることは報道され、日常業務からも明らかなように思う。
数が減って、本当に島の実情を理解して移住して来る人だけが残るのであれば、結果オーライと言えるかも知れない。もともと仕事のない島にそれほどキャパシティが あるわけではない。



■原油値上げと八重山観光

国際線においても原油価格高騰にともなう航空運賃の値上げ分、サーチャージの影響が出ているようだが、国内線の石垣便でも航空運賃の値上げによる影響が出ている。
また年金問題や後期高齢者云々にみるように将来への経済的不透明感や諸物価の相次ぐ値上げもあって割高感のある八重山は敬遠され、20年来、右肩あがりに推移してきた入域観光客数は、昨年末ごろからは数字の上でも減少を見せ始めている。
パンク寸前で、増え続ける観光客に対応しきれず、疲労していた離島の水牛さんや疲弊する自然からすれば入域観光客数が減ってくれること自体はありがたいことである。
しかし数の増大をもって好調と評されるような単純なビジネスモデルを持っている人間様の世界ではこの状況を喜んではいられない。。
少ないながらも八重山命の熱烈なリピーターを獲得していたひと昔前の八重山観光とは客層も異なり、宿泊地となる石垣島を含め既に大量高速輸送で薄利多売に移行している現在の離島観光にとっては観光客数が年々減ることは収入減に直結し、既存の経済規模を維持できなくなることを意味するからだ。
八重山の最大の魅力や、観光のクオリティ、そして将来へのビジョンを語ることなく漫然と増え続ける観光客に収入源を依存していた業者にとっては、これからいやおうなく変革を迫られるに違いない。
ここにしかないものを商品として継続的に提供出来る環境を先に整えたものが生き残るのだろう。
それは、今一度、島の魅力は何だったのか、島自らが問い直す作業ではないだろうか。
残された自然を残すことはもちろんだが、この地域のもつ人の魅力や、閉塞した島として時の為政者に搾取されながらも、したたかに生き抜いてきた文化そのものの魅力が今では一番忘れられているように思う。


いまだ見えぬ自立への道と模索

では、観光客も公共工事も減る状況のなか、リゾート開発にも移住にも否定的な立場をとる石垣市としては何で経済的自立を目指すのだろうか?
行政サイドをみると台湾からの観光客誘致に熱心なほかは、ロッテキャンプとかワールドカップ・トライアスロンだとか石垣島の知名度を全国や世界に高めることについては熱心に見える。
ただ、これらの与える経済効果が額面通り、地元に還流しているのかは、なんでもかんでも民間支出に期待する財政との関係からも疑問に思う。
先日も持ち出しの大きいトライアスロンの継続が議題にされ、市民アンケートが行われたが、継続開催による長所と短所を示した上での一般民意を問う形ではなく、はなから継続ありきのアリバイ作り的色彩が強い内容となっている。やめた場合のデメリットは書かれているのに、この支出によって住民サービスが低下する可能性もありますとは正直に書いてないのだ。
継続でも中止でも、それで石垣島として何を得て、何を失うのかをきちんと把握した上での議論をしないことには意味がないだろうと思う。
全国平均からすれば出生率が高いとは言え、高齢化する社会で医療・福祉への負担が増大することは石垣島とて例外ではないはずである。
赤字予算を計上し、必要なインフラ整備や公共サービスへの財源も危ぶまれる逼迫する経済状況の中、身売りしないでも地域を維持してゆく秘策があるのだろうか。
石垣島には沖縄本島の基地のように目に見えるオールジャパンへの貢献はない分、補助金頼みでは明るい将来は見えてこない。
出生率が内地より高いと書いたが、その若い世代が島に残って働き、地域を支えようにも地方に堅調な産業がなく仕事がなければ、みな外へ出稼ぎに行かざるを得ない。島を支える産業や優秀な人材の育成が急務であることは論を待たない。
かくして具体的な提案のない行政に将来への不安を感じる住民は少なくないはずである。
軍事基地化されることなく平和に自立するための産業構造を考え直さねばならず、景観の上から土地利用を規制してしまうだけでは何も産まれてこないのではないか。
ブームが去った今こそ、既存の構造から明日へのパラダイムシフトを実現させるためにも、柔軟でフレッシュな発想が必要な時だろう。
我々、不動産という立場で移住者に関わる身としては、いろんな欠点も含めた素顔の八重山が大好きで、石垣島の明るく平和な将来のために積極的に関わってくれる方々の移住を望み、お手伝いをさせていただきたいと思っています。
移住は結婚のようなもの。毎日、ドレスを着て夕陽を眺める浜辺のレストランで石垣牛を食べられないかも知れません、毎回、護岸でカップラーメンのデートになるかも知れません、でも今年の夏は理想島との片思いではなく、実在する島との相思相愛の関係を築いて欲しいと願っています。今年の夏こそ、ホントの恋の予感!


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